榎槻織の雑記

人間です。

ゾルピデム

 

ゾルピデム

 

 

小さな錠剤と水を口に含み上手に飲み込む。そして私は横になった。5分ほどは何もない。ただひたすらゆっくりとした時間の流れを感じるだけだ。横になってから約5分後、私の身体中に丁寧に敷き詰められた血管がどくどくと蠢き始める。血液の流れを鮮明に汲み取り、皮膚が微かに痙攣する。それからまた5分後、軽い目眩と口内の違和感が襲う。だが、ここまで来るともう私の意識は薄れ始めている。人差し指を上に上げようとしても、寝返りを打とうとしても、思い通りに身体を動かすことができない。ようやく。部屋に流れる静かなクラシックの音色が、大から小へまるでグラデーションみたいに消えていく。落ちていく瞼を必死で開けようとする。そこは暗闇の、クラシックが流れる部屋ではなく、真っ白な世界へと変わっていた。その刹那、瞼が耐えきれなかったと言うように落ち、私の身体は機能を停止した。