ヘッドライト
天気予報では雨だった。
彼は閉じられた傘を片手に持ち、階段を降りる。そして彼はこめかみをかいた。
鮮やかな透明の湖で溺れてみたい。そう願ってしまうのはきっと、君のせいだろう。
「もういい」
「あなたはもうすぐ死ぬのだから」
「ああ、そうだ、死ぬんだ、おれは」
「そう、あなたは死ぬ」
「死ぬ、ああ、そうか、そうだな、死ぬ」
「死ぬのよ、消えるのよ、悲しい?」
「ああ、ああ、ああ」
人のいない公園で、揺れたブランコ。
そして男の子は、スコップを貸してと言った。
「ずっと思ってた。
何故死ぬのには理由が必要なのかなって。
産まれてくること、生きることに理由は要されないのに、どうして死ぬときには理由が要されてしまうのかしら。」
私の求めているものは、いつも手に入らない。これが地獄だとしたら?
白い陶器の皿を割ってた、君を見てる。
罪悪感はもうとっくに失ってしまった。
「助けて、お願い、ねえ、助けて」
柵、花壇、犬
ネオンライトが光る、雪が降ってる交差点で、赤い血を流す人を見たんだ。
大宰治の人間失格にも書いてあったじゃないか、「世間というのは君じゃないか」、と。
いつまで“自分だけが違う”ふりをするんだ?
結局君も世間だし、私だって世間でしかない。
バレエやピアノを習ってみたかったと思うことがよくあります。私が育った家はそんな贅沢なことは一切させて貰えなかったし、学校で必要だったものすら用意して貰えなかった。
ふとした時、綺麗に踊るバレエダンサーを観たり、さも当たり前かのようにピアノを弾く人を観ると、素直をすごいと思うと同時に酷く羨ましいと思います。
これは紛れもない劣等感。
どう考えても私は無能で、その無能を無償の愛で愛してくれる人もいない。
だから私はせめて何らかの才能を持って代償の愛でいいから愛してもらいたいと思った。
でもそれすらできない私はもう、救われたいとは思わないし、それを与えることのできない人間に謝られたとしても見て見ぬふりをし続けるだろう。